
カトマンズ盆地北西の丘上に位置し、境内のサルの多さからモンキーテンプルの名でも知られるスワヤンブナート。市街地から突き立つように盛り上がった丘の上に建っているため、恰好の展望台にもなっています。カトマンズ盆地の繁栄はスワヤンブナートから始まったとも言われるほど、太古の昔から何世紀にもわたって静かに市街を見下ろし、カトマンズの名声と調和の長い歴史の象徴の役割を果たしてきました。
スワヤンブはネパールでも最高峰のチャイティヤ(Chaitya、仏教寺院)ですが、伝説では、カトマンズ盆地がまだ湖として滔々と水を湛えていた2千年も昔に、湖中にあった島(今の丘)の上にすでに建立されていた、といわれています。確かにこの種の寺院としては最も古いものの一つであり、境内には多数の聖堂や僧坊、修道院等が建てられています。伝説ではまた、かつてのカトマンズ湖中に咲いていた蓮の花からある日突然、大日如来が生まれ出でたといわれ、これを祀ったのが寺院の始まりともされています。
「スワヤンブ」は「自らを創り出したる者(=大日如来)」を意味しますが、西暦460年ころの碑文によれば、現在の主塔はマナデヴァ王(King Manadeva)の建立によるとされています。13世紀頃には仏教の総本山として重要な位置を占めるに到りました。
スワヤンブ本塔に行くには長い長い石段の参道を登ることになるため、尻込みしてしまう方も居られますが、実は横から車で頂上付近まで上ることもできます。寺院の西回廊にはネパール最大のブッダ像が据えられており、学問の女神・マンジュシュリ(文殊菩薩、Manjusri、Saraswatiとも)を祀った聖堂もあります。マンジュシュリはカトマンズが湖だったという伝説の中で、生まれ出でた大日如来を巡拝しに訪れた際、住民が湖中に住む悪蛇に悩まされていると聞き、外輪山の一部を切り取って水を抜いた、とされている女神で、この結果、水が抜けた湖底に肥沃な盆地が出現し、人が住めるようになったとされています。このほか境内にはチャイティヤ(スワヤンブ式仏塔)や彫像、聖堂・伽藍等が多数祀られており、ふもとは近年整備された祈り車にぐるりと囲まれています。参拝者が居ない光景をみることがめったいないくらい、多くの人が常に祈りに訪れる場所です。
見どころ